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2006年1月30日 (月)

ピンク映画トキワ荘 その2

坂本 君らは監督になるリアリティってあるの?

いまおか 何年やってるんだっけ? 大西は。

大西 僕は10…

坂本 そんなにやってんの!

大西 地下鉄サリン事件があった年からですよ。…すいません…。(会場笑)

伊藤 僕は2000年からだと(思います)…今年で5年スかね。

坂本 いまおかさんは何年で撮ってる? いまおかさんでも遅い遅いって言われてたよね?

いまおか 瀬々さんが3年で監督デビューしてて、オレは90年に入って95年にデビューしてるから5年。25才の時に業界に入って、30才の時にデビュー。

坂本 オレも21才になる時入って(監督デビューが)25才の終わりだから5年。

いまおか 遅せえなお前ら。

大西 (頭に手をあてて、スイマセン)

坂本 どうすんだよ、お前ら。

伊藤 どうすんスか、大西さん。

大西 まあ、どうにか。(会場笑)

坂本 ビジョンとかないの? 裕くんは。

大西 ビジョンはない…。

いまおか 生活自体はどうなの? 結構しんどいとか思うことある? 昼間いくと布団で寝てるんだよな。起きてビール飲むって、そんな感じ?

大西 しんどいのは、性格が合わない人間と住んでること。キレイ好きじゃないですか、俺。彼(伊藤くん)がこんな髪型(アフロ)してるじゃないですか。髪の毛とか落ちてると気になるんですけど、集めると縮れ毛とか沢山集まって凄いムカつくんですよね。

坂本 でも裕くん、なまけ者だよね、本当に。うちらもうちょっと忙しなくやってたよね、助監督時代。めっちゃ流れる時間遅いもんな。

大西 ロハス。

坂本 ……(絶句)

いまおか でもオレ、助監督になったのが25才って遅いじゃん。上につく人が結構若い人だったりして「使えねーな、このおっさん」とか言われたりなんかして。でも大学時代で青春って終わったなーって思ってたんだけど、男二人ぐらいで住むと、現場から朝方帰って来たら、坂本が奥から出て来て「ちょっと出ててもらえます?」って1万円渡されたりとかして。多分、おネエちゃんかなんか居たんだよな。

坂本 まあ、そうですね(笑)

いまおか 「なんかせつねーな。オレ、寝てないんだよ」とか思いながら、ファミレスでお茶飲んだりして。そういう朝の風景とか覚えてるんだよ。

坂本 まあ、その当時は携帯電話とかもなかったですからね。僕この間、荒井(晴彦)さんの『新宿乱れ街 いくまで待って』を下北沢で観て、「僕にも青春ってあったな」とか思いましたよ。いまおかさんと住んでた頃って何かあるんだよね。…君らはないの? そういう甘酢っぱいエピソードとかは。

大西 俺は特に(ない)。夜、部屋行ったら「あっ!!」みたいなことはありますけど。

伊藤 それは誰のこと?

大西 君のこと。

伊藤 それはお互い様ってことで(笑)

いまおか (伊藤)一平は、なんで助監督つづけてるの?

伊藤 まあ、なんスかね。映画の業界と水があってるかわからないスけど、なんとなしに続いてる…それはやっぱりカントクやりたいからですよ。そうですよね、大西さん。

大西 んー(コクリ)

坂本 いつやんの?

大西 今年で。

伊藤 爆弾発言(笑)

坂本 言ったからには実現しないと。

いまおか 何月ぐらいにすんの?

大西 寒いとしんどいんで、秋ぐらいで。

坂本 9月か。

いまおか ホンとかこれから書く感じ?

大西 そうすね。全く何も。

坂本 ま、でも俺が2本目撮ったのいつだっけ? あん時もやんのかなー、みたいな感じあったけど、やらずだったもんな。

大西 火が一瞬だけつくの。2、3日して消えちゃう。

いまおか やっぱり1人暮らしでちゃんと生活を立て直そうとするより、とりあえずデビューして行き着きたいというのはあったよね、…オレはあったんだよね。金はなくても楽になるんだよ、気持ちが。そのことだけ考えてればいいから。

坂本 俺は最近ですよ、自分の映画のことを割と中心にずっと考えられるようになったの。ここ1年、1年半ぐらい。結構、撮ってから時間がかかりましたけどね。

(2006/1/22 @ポレポレ東中野)

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2006年1月29日 (日)

ピンク映画トキワ荘の青春 その1

いまおか 最初説明した方がいいと思うんで。僕が95年の30歳の時に監督デビューしたんですけど、丁度その頃高円寺で女性の人と同棲を3年ぐらいしてたんですが、ちょっと問題があって追い出されて、獅子プロダクションという当時所属していた会社の倉庫に住むようになったんです。それで坂本(監督)が、小岩に住んでいたんですが「一緒に住むよ」ということになりまして、全くその頃お金がなかったんで二人で新宿の部屋を借りて住み始めたんですが、何故かそこに住むところがなくなった大西(裕・助監督)や(伊藤)一平(助監督)だとかが転がり込んできて、(同じアパートにピンクの監督・助監督が住むという)そういう状況になったということなんですが。

坂本 僕が一番最初に会った助監督っていまおかさんだったんですね。面接っていうか、その時は監督は瀬々さんだったんですけど。で、僕はいまおかさんと5年ぐらい一緒に住んでいたんですが。裕くんは…大西くんは専門学校の同級生で、僕の方が在学中から助監督してたんで、僕の後輩になるんですが、なんとなくピンクやらないかということで誘ったと思う。伊藤くんは何でピンク来たんだっけ?

伊藤 104で。というのは「映画秘宝」という雑誌で、「監督になるための方法」というインタビューで、いまおか・坂本両カントクの二人が載っていたんですが、確か坂本さんが、国映…映画を作っている事務所なんですけど、電話番号を104で調べてやってきたというのが書いてあったんです。それで同じことやったんですけど。

坂本 コレってピンクの監督をすると、家賃が払えなくなるっていう系譜なの?キミは家賃が払えなくなってうちらのとこに来るようになんだんだよね。

伊藤 そうですね。今、4万9千円のとこに住んでるんですけど、大西さんと折半ではらってます。

坂本 ま、今は僕らは住んでないんですけど。

いまおか 卒業したんですけどね。

坂本 僕も2年ぐらい前に卒業した。

いまおか 大西はなんで住むようになったの?

大西 いやあ、なんとなくというか…家賃を2年分ぐらい滞納しまして。なんか素晴らしい楽園があるという噂を聞いて参入しました。

坂本 高田馬場に住んでいて・・。

大西 家賃1万5千円・・・。

坂本 1万5千円のところを20万近く滞納してた。もうダメだから来いって言ったなあ、そういえば。

いまおか そんなにしてまでピンクの助監督って…普通に働けばいいじゃん。

大西 ピンクの助監督もそんなにやってなかった…。働いてなかった…。

坂本 裕くんがこん中で一番なまけものだからな。…みんな、いまおかさんの助監督やったことあるんだよね。僕もチーフ、やってるなあ。裕くんも、いまおか組・・。

大西 ありますよ。いまおかさんのでピンク映画に行ったっていうか、(いまおかさんに)吸い寄せられたんじゃないのかな。

いまおか ありがとうございます(笑)助監督の時って、何でしんどかったのかって思うと、やっぱり何のためにやってるかというと、監督にいつかなるだろうと思ってやっていて、人を仕切ったりとか、何時に人集めるとか苦手だったんですよ。それでもやれたのは、そういう日々の中でホン(脚本)書いたりとかっていう監督になろうという作業をしながら、そういう段取りとかもしなくちゃならなくて、気持ち的に落ち着かないって言うか、しんどかったんですけど。そんな時に一緒につうか、同じしんどい所にいる奴が近くにいるっていうのは、別に相談なんかしないんだけど、そこでなんとなくやめるってとこに行かなかった。1人で生活してたらダメだったかもしれないって、今ちょっと思うところがあるんだよ。

坂本 いや僕ね、本当にいまおかさんと一緒に住んでたり、いまおかさんが先輩だったことに感謝してる部分があって。僕らの先輩、瀬々さんとかは既に監督だったんですよね、僕が入った時には。いまおかさんがその時助監督で、僕が助監督をして1年目ぐらいに、監督デビューしたことで、監督になれるというリアリティを持てたんですよね。いまおかさんは、一緒に住んでて、読書家だったし、自分でシナリオとかも書いてる姿を見てたんで、そういう所を真似したところは僕はあったんすけどね。

つづく

(2006/1/22 ポレポレ東中野にて)

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2005年12月30日 (金)

七福神と呼ばれた男たち<後篇>

女池 でももうそろそろ、何を撮りたいのかっていうのを明確にしていかないと、この先進めないんじゃないかなとか思ってるんですけど。一通り話をしてもらって、ピンク映画撮ってる…もう卒業した方もいるんですけど、ピンク映画をどういう感じで作っているのかということと、お客さんもイジらせて貰いたいなと。じゃあ順番に。

坂本 僕も、何でピンク映画を作ってるかっていうと女の人の裸が好きだからだと僕自身は思ってるんですけど、田尻さんとかに鼻で笑われるかもしれないんだけど、僕はそれがあるとつくづく思うんですよね。

女池 今の坂本の意見に、何か。会話にしていきましょう。いまおかさんとか言いやすいんじゃない?

いまおか え?(坂本さんに)ハダカ好きなの?

坂本 めっちゃ好きですよ。

いまおか そういう風には思えない。

坂本 でもみんな、セックスシーン好きでしょ?だからピンク映画やってんじゃないの?

いまおか そうでもないんじゃない?僕はあんまり。見るほうが好き。

坂本 ふーん。田尻さんは?

田尻 坂本に聞くけど、坂本が女の人の裸が好きなのはなんとなく分かるんだけど、ボクが好きなのはキレイに撮ろうというか、そういうのが物凄いある。で、坂本のは・・・。

坂本 キレイに撮ろうとは思ってない。

田尻 思ってないよね、絶対そう思ってないよね?それで前さあ、坂本が2本目の『18才 下着の中のうずき』でケーキをぬりたくってそれを舐めさせてとかっていうのがあって、そこを僕に自慢してて、撮り終わった後「すっごい絡み、エロイの撮っちゃった」って。

坂本 それはないよー。

女池 田尻さんは人と違ってるとこがあって、田尻さんなりの受け止め方だと思うんですよ。さっきの僕の話を聞いてても思ったんですけど。

田尻 ちょっとオーバーに話してる?

女池 いや、受け取り方が違うと思う。喋ってる人の真意を汲み取れてないんだと思う。(会場笑い)

田尻 そうか。いや、ちょっと酔っ払い気味なのかもしれないけど。で、坂本は裸が好きでどう撮りたいの?

坂本 ちょっと僕、どう撮ろうというのは、田尻さんと言ってること違うのかな。そんな気もするんだけど、女の人好きなんだけど、僕はもしかしたら女の人になりたいって思ってるのかなって思うぐらい、ちょっと羨ましいなって思うんですよ、女の人って色々あって。生理とかあったり、パンツにオリモノついてたりして。ああいうのを映画にしたいんですよ。よく分かんないんですけど、ああいう世界を具体に出来たらいいな、色々ある感じを。だからこう女性の裸の絵画的な美しさみたいなものには、興味はないですよ。

田尻 でもさ、生っぽいそういうのも、坂本、映画の中でやってない・・・。

坂本 最近気づいたことかなのかもしれないけど。なんかまあ、そういうことをしたくてピンク映画に来たのかなぁみたいな感じをなんとなく自分で気づいたっちゅうか、思い始めたのかもしれない。

女池 榎本さんどうですか?次、1月から撮るのは榎本さんなんですけど。

榎本 撮る前は普通に(ピンク映画を)お客さんとして見てて、普通の映画も成人映画もその頃はロマンポルノもあったし、分け隔てなく観てたんで、理屈じゃなくこうあるべきなんだろうというような感じがきっとある。それを頼りに撮ってるというか。そういうのはあるんですけど。やっぱりその裸というか絡みとかそういうのは、ただやってるんじゃなく、それを見せる形にしなきゃなんないっていうのはやっぱり撮ってて難しいんで、それは常に考えなきゃって思ってるんですけど。

女池 じゃあ一通り聞いていきましょう。鎌田さん、撮られてた時はどうでしたか?鎌田さんは唯一、この中でピンク映画をやろうと助監督として入ったんじゃないと思うんですが。

鎌田 僕はTVをずっとやってたので、ピンク映画ずっと観まくってた訳じゃないんですけども、やっぱり、現場に入ってみて余計なものとか人とかが、あんまりなく感じてシンプルで規制が全然ないちゅうのがよかった。まあ女の人好きですけど、裸を撮りたいっていうのはないです。低予算でシンプルなのが良かった。

いまおか 僕は、なんとなく獅子プロみたいなピンクばっかりやってるプロダクションに入って、まあ気付いたらピンク映画って世界に居たっていうか。もちろん観てたりとかして、それで好き・嫌いとか居易い・居づらいみたいなことで言うと、居易い世界だったけども、自らがつかみとった選んだ場所ではなかったと思う。結果的には選んだけども。撮るなら撮るでベストというか、なるべく100%に近い何かをやるというか、周りの人との関係だったりするんだけども。その中で坂本とかも、ピンクっていう土俵の上にドンと乗ってるから、そういう風な考え方になるんだと思うけど。まあ今、目の前にある大問題が(自分が中にいる)ピンク映画だから、それについては良く考えますね。まあ釣りとかもしながらなんですけど、逃げながら、でも土俵の外にちょっと出れない感じは今はしてますけど。

上野 何故ピンク映画か?ちょっと僕、分からないんですけど。セックスシーン撮るの、すごい気恥ずかしいというか。セックスが好きで女の子も好きなんだけど、一番恥ずかしいんですよね。自分自身が映画の中でひとつ裸になって、もう一回セックスシーンで裸になんなきゃいけないっていう。なんか凄い恥ずかしさがあって、早く撮っちゃおうっていう、早く撮りたがる所があって。あるプロデューサーに「上野さんの絡みっていつも腰の使い方が早いですよね」って言われて。オレはこの位だけどなって思った事があって。やっぱ凄い一番裸になる部分だよなってとこはありますよね。

女池 一応ボクも言わせて頂くと、どうやって映画を自分がやれるだろうっていう所でピンク映画っていうものを選んだんですが、それには幾つか理由があるんですけど、一つは男と女の人が出てきて好いたはれたとか、エッチするしないとか、そういう世話もの的な映画を撮りたいなあと思ったんで、そういう意味ではピッタリだったんで、ボクはそれで今も(ピンク映画を)やってるんですが。一通り話しをしてもらったんですが、今度はお客さん方にも聞いてみたいんですが。「P-1 GRAND-PRIX」の時に直接お客さんに聞いた訳ではないですが、もっとお客さんたちはイヤらしいものを期待して観に来てたんじゃないかなって思ったんですね。皆さんどうですか?ボクは個人的に言うと、『スワッピングナイト』はそこにちょっと立ち向かってゆきたいなあというのものがあって。毎回立ち向かってる訳じゃなくて、『花井さちこ』の時は微塵も考えなかったです。そこらへんはどうですか?いまおかさん、『たまもの』では本番でやったりとか・・・。

いまおか いやぁどうなんだろうな。自分が観客の立場としてあんまりエロいものを観たいと思ってなかったから…。なんか、その「エロいの向こう」を見たいっていうか。「向こう」って何?ってよく分からないんだけど。その、なんだろ…うまく言葉に出来ないんだけど。ちょっとした声だったりとか、「ああそうだよな」っていう。単純にエロいっていうのもすごい広くなっちゃうっていうか、いやらしいものを撮るっていうことにあんまり興味がないのかな?オレがね。…だから興味がないことには、なかなかタッチできないから。

女池 どっちかっていうと興味がないっていうのは多かったですね。でも、観に来る人はそうじゃないんですけど。じゃあ、一番前の人に聞いてみましょう。今日は何で来て頂けたのか、何を期待して来られたのか、一言いただけないでしょうか?

客1 来たのは友達に誘われてなんですけど、僕らの年代はピンクって盛んな時期が大学時代で、そういうことに一番興味がある時期を過ごしたもんですから、その後AVっていうのが出てきてエロを観たければAV観ればいいやと。それプラス映画のストーリーとか演出とか編集の感じとか、そういうのを見るならピンクっていう。私も暫く映画鑑賞から離れてたんだけども、今回観て感じたのは、AVが出てきたことによって、ピンク映画ってすごく自由になったんじゃないかなっていう。今日の映画(『ビタースイート』)でもわりと人間関係とかしがらみみたいなものとかを、きっちり描かないと映画にならなかったですよね。そういう意味ではピンクって進歩してきてるよなっていう、自由な映画になってきてる気がして。色んな形でピンク映画ってどんどん撮られていくべきだし、そうなっていくんだろうなと、これだけ若い方々を見て思いました。

客2 映画全体に求めるものってものが色んな可能性があって今日ここに来てる感じで、こういうのが見たいのかもしれないということで来てるんですが、今(壇上の監督の)皆さんもピンク映画をやってらっしゃると思うんですが、監督人生でもっと大きな映画の可能性もある中で、何故かピンク映画をやってらっしゃるという所に非常に面白さを感じる。ピンク映画の好きな所ってせっぱ詰まった感じ、そういう所でたまに否応なしにセックスをやってるんじゃないかみたいな感があって、それが面白いですし。さっきのピンク映画は自由だって話も、自由かもしれないけど、不自由でしょっていう。そういう所にキュンとくるっていうか。

女池 今の話を聞いてどうですか?じゃあ、次に撮る榎本さん。

榎本 映画撮るのは楽しくもあり、辛くもあり、ピンクを撮るということは裸を撮ることでもあり、絡みを撮ったりするのは仕事としてやらねばならない意識としてやってると思う。仕事というのは楽しいけれど辛いというものが共存してるから良いのであって、そういうところが滲み出て映画に人間味が出ればいいかなと思います。

女池 じゃあ最後にシメで。今の話の流れでアンチなのは田尻さんなのかな。

田尻 もともとエロ映画のピンク映画とか撮りたくて入ったんじゃないっていうのが正直なところで、自主映画で色々応募してダメで(助監督)3年で監督にしてくれるっていうからアレなんだけど。入ってみてさ、獅子プロの先輩方のもの凄い情熱っていうかキチガイじみた現場を色々経験しているうちに、なんかひっぱられてというか、感化されて、良い世界だなとかって思って。それでピンク映画に入ったからには、徹底的にエロいのを撮ろうとやってきたけれども、最近ちょっとボクの考えるエロの話だけど、即物的じゃない方が、魅力的な女性を描いてお家に帰って抜いてくれるっていうのを目指して作ってるんで。さっき言ったキレイとかいうのもその単純な意味の美しさっていうよりも、乱れた感じも全部含めて…いまおかさんの『たまもの』でいうと息が出来なくて、現場で「溺れてるような」と言ったらしいけど、そんな感じがグっとくる、泣けるっていうか感動するし、家に帰ってオナニーしてくれれば良いと思ってやってるんで。なんですかね・・・。

2005年12月23日 @ポレポレ東中野

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2005年12月29日 (木)

七福神と呼ばれた男たち<前篇>

女池充(以下「女」) 今、ロビーの方にコレ(「P-1 GRAND-PRIX2000」パンフ)が置いてあるんですが、5年前に「P-1 GRAND-PRIX」というピンク映画の上映会があって、その時にボクたちは「ピンク七福神」と括られたんです。僕らが助監督としてついた先輩の監督さんたち四天王(瀬々敬久、サトウトシキ、佐藤寿保、佐野和宏、敬称略)と戦おうということで企画されたイベントだったんです。その時に会場にはいたんですが、こうやって揃って(「七福神」と呼ばれた監督たちが)並ぶことって始めてのことじゃないかと思うんですが、貴重かどうか分かりませんが、話してもらおうと思います。まず、ボクの映画のことを話しません?せっかくだから。

上野俊哉(以下「上」) 皆さん寒い中ありがとうございます。女池を一番ぶっ叩いた人間です。なんか感じとしては僕のただ一人の後輩で、一本しかつきあいないんですけど、よう頑張ってるなと思ってます。

いまおかしんじ(以下「い」) んー、そうですね。ピンク映画って予算が決まっているんですが、その中で何しようかとここに並んでいる人も思っていて、どうしようか考えるんですね。どういう風に考えたらいいかっていうと、センター試験みたいな高得点はとれないみたいな感じがあって、一芸入試というか、その一芸をいかにみつけるかっていうのがテーマとしてあって。女池さんはそれを主観的にやってるのかなっていう。なかなか、それがみつかんなくて、落っこちちゃったり。そういうことの意味において同じ場所で戦っているなという風に見てます。ハイ。

鎌田義孝(以下「鎌」) 自分の作品について?(笑) (女池監督作品は)うまいなあ、と思いまして今、(『ビタースイート』を)観てました。女性を撮るのが上手いのかなと思ってたんですけど、男性も上手いし、カット割りも上手いし。

女 誉められたくて呼んだんじゃないですよ(笑)

榎本敏郎(以下「榎」) 厳しい意見っていうことじゃないんですけど。この前にやっていた『花井さちこの華麗な生涯』は苦手というか、ピンクで60分バージョン撮って、90分バージョンというかインターナショナルバージョンがここ(ポレポレ東中野)で上映されたんですけど、長くなって話は分かりやすくなったんだけど、それが面白さに繋がってないなみたいなことを、本人に言った記憶があるんですけど。『ビタースイート』に関しては、良い印象があって。脚本の西田直子さんが女池充と何本もやってるんですけど、初めてというと失礼ですけど、自然だなと。何気ない台詞でありながら、予定した台詞で、話を語る台詞でありながら、作り物じゃない台詞に聞こえた。それは監督の演出だったり、役者さんの芝居だったり、そういうことが全て作品の魅力だと思うんですけど、最近そんな感想を監督に言ったら、僕の周りではみんな評判悪いんだ、と。それは意外だなと思ってたら(今、聞いてたら)皆さん肯定しているんで。

女 ボクは田尻さんから聞いたんですが、みんな否定的だって。(会場笑い)

田尻裕司(以下「田」) それは、だからアレですよ。その話をみんなでした時に、榎本さんが「いやいや女池充の中ではいい方だよ」って…。

榎 「いい方だ」なんてそんな失礼な言い方は僕はしてないですよ。

田 やっぱり言った方がいいですかね。ここまでみんな誉めてるんだから…。ボクは『花井さちこ』と『ビタースイート』と殆ど現場に居たんで、あんまり客観的なことは言えないんですけど、ボクはまだ『花井さちこ』の方が…。ボクは雪山で撮った『情炎』が好きですね。

女 会場の人わからないから(笑)

田 ああ。…だから現場に居たからでもあるんですけど、凄い時間がかかってる感じがして、丁寧な映画だなと出来上がって思いましたけども、話がなんかつまんないいていうか(会場笑い)だからどうしたの?みたいな感じが凄いあって。脚本読んだ時からボクは言ってたことだけども、だからそれぞれの感情の流れは分かるけれどそれが面白くないっつうか。特に女池さんの映画のことでボクが凄く言っているのは、ボクはやっぱりピンク映画作ってて、自分の作品はたまにそうでもない作品もあるので置いといて、セックスシーンを観て欲しいっていうのがやっぱりある。よくピンク映画っていうのはセックスシーンさえ入れば何やっても良いみたいな言い方する人がいるけど、そういうものだとボクは思ってなくて。だからセックスシーンが輝かないと、それはやっぱりピンク映画じゃないんじゃないのって、だったら他の所で撮ればっていうのがずっとあって。女池さんの作品でボクは『情炎』以外はワンシーンぐらいは良いセックスもあったけど、ちょっと『ビタースイート』に関していうと…(セックスシーンは)必要ないっていうか。ボクがビデオで観てたら早回しするし、寝てても話は全然(分かる)みたいな。それがやっぱりちょっと…。現場で見てても…。

女 うしろで見てても…。

田 いただけない…。(会場笑い)オレさあ、現場でもちょっと言った筈なんだけど。「違うんじゃないの」みたいなコトは。

女 それは覚えてないですね。

田 特に、あのぉ・・。向夏とKINさんが台所に行ってガンとやって・・・セックスに至る。何かもうちょい激しい方が良いというか。カット割りでわりと誤魔化してる感じがして。

女 そんなにオレも深く考えてない(笑)

田 一番オレは、また来てさぁー、台本からちょっと設定が変わってるけども、向夏が離れて泣くように座ってるレストランのとこ・・・(ぶつぶつ)

榎 じゃあ台本での演出が弱いってこと?

田 うーん、だったらセックスやんなきゃ良い、とばせばみたいなのがあって。

女 割って入ってくれる人とかいない?(笑)

田 ただその、あの、女池さんの映画、ボク2本しか一緒にやってないですけど、『ビタースイート』も大変だったけど、女池さんって現場で誰よりも体力がない人なんで。助監督時代よりはもうちょい起きてられるけど。女池組って現場で(女池監督の)「寝待ち」があるんで…。だけど、カットかかって、役者さんとかカメラマンとかが、女池さんの方を見てても、芝居が終わってんのに女池さんが寝てて、フィルムがガラガラ廻ってる時もあって。それでも「もう一回」って言うじゃない?見てないからそれは当然なんだけど、これでいいのかと思いながら、だけどそうやって繰り返してることによって、ボクの知っている役者さんが一杯出てるわけだけども、見たことのない芝居になるっていうか。ずるずるずるずるやるじゃない。今回も二日目から最後までずっと(毎日の撮影が24時間)繋がっていたし。で、ある種独特な、まるで緊張感がないダラーっとした感じで。だけどその芝居が「この役者さん、こんなことするんだ」みたいなのが凄いあって。それは女池さんがあそこまで粘るというか、女池さんの言葉で言うと「世の人全てが自分のために何で協力してくれないんだ」みたいな酔っ払ってよく言う訳だけども、その感じが凄いこう…ダラっとしてるんだけど凄い引っ張っていってる力になって。うん、全体的にすれば、ああ凄いなあっていうか、そういう部分は尊敬してます。それが『花井さちこ』の90分バージョンとか、『情炎』とか、それが結実してるから、凄い好き。

坂本礼(以下「坂」) 僕はこの映画の感想じゃないんですけど、作っている人と作っている人の生活を結びつけるのは低俗かもって思うんですが。まあ西田さんは離婚経験者ですよね?で、女池さんって既婚者じゃないですか。こういう話って、まあ僕なんて「結婚ってお茶漬けの味みたいなもんだよ」みたいな話じゃないけど、そういう感じで(『ビタースイート』は)結婚を壊して他に行く話じゃないですか。女池さん、実生活で結婚っていう形を抱えてて、こういう話を作るんだなあって。これどういうことなんだろう、ホン(脚本)を作ってる時に、結婚を壊していくことに関してはどういう話し合いがあったのかなって思ったんですけど。

女 別に何もないんだけどね。そこらへんの壁はオレはないんだよ。結婚してるんですけど、最近円満になってきたんですよ。NYに僕は一年間行ってたんですけど、NYに行ってこの一年間で随分家庭環境も円満な方向になり、子どもも「お父さん」って言ってくれるようになり(笑)良いことづくめなんですけど。あんまりそういう考え方しないんで逆に。

坂 それは物語を作るってことに於いて、こう色々枠組みを作っていく上での一つっていうことなんですか?

女 答えにならないけど、ボクね、女の人にモテなかったんで。そのことは結婚・離婚よりは、モテる・モテないの方が微妙に結びついてるんですけど。

坂 皆さんはあんまりそういうこと思わないんですか?だから僕は石川さんと林さんは夫婦の関係性を持ってなきゃいけないのかなって、そういうのは思ったんですけど。

女 往々にして役者さんとは、かなり齟齬がありますよね。現場で。ボクが思っていることと役者さんが思っていることが、噛み合わないまま映画が終わっちゃうみたいなことが。ボクは噛み合ってないから分かってないですよね。この前、川瀬(陽太)さんにそういう話をしてもらったことがあるんですけど、結構そう思ってるんじゃないですかね。噛み合わないまま、色んなものが入ったらいいなっていうのがあるんです、フィルムの中に。それを良い方に転がしていければっていう。

(後半につづく)

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2005年12月 6日 (火)

Pinky Tusker 参上!

トークイベント2回目のこの日は、来年3月公開の『ちゃんこ』の監督であり、女池監督の師匠・サトウトシキ監督と、『ちゃんこ』にも出演している俳優の柄本佑さん、そして女池監督の仲人でもあるという評論家で詩人の福間健二さんを迎えて行われました。その時の模様をレポートします。tasuku_all

福間健二(以下「福」) 今日はちょうど女池監督の結婚記念日で10周年という話で、あの時はトシキ監督の『アタシはジュース』の撮影中で。花婿がなかなか到着しない、大変な結婚式だった…。それでデビューは…。

女池充(以下「女」) ちょうど『アタシはジュース』の編集をしている時に、ある人から連絡を頂いてVシネの監督をしないかと。翌年、ピンク映画も撮って。

福 それから8年ぐらいか。女池監督の作品はどれもバラエティにとんでいるとしか言いようがない。特に映画として2本目の『まるで再出発』では本当にびっくりして。その後も、次の作品が違う角度から出てくるなんとも掴みようのない監督で。

サトウトシキ(以下「サ」) 女池には助監督をいっぱいしてもらって、何の因果か師匠ということで(今日は呼ばれたが)、こんな2本も連続で上映されるんだから、これからだと思っていたいなというところです。

福 ピンク映画というジャンルでサトウトシキ監督や瀬々敬久監督ら四天王が出てきた時も驚いたが、若松(孝ニ)さんや向井(寛)さんの時代からずっと続いてきて、今の人にもアピールするものになっているんだからすごい。

柄本佑(以下「佑」) 元々は藤田敏八監督の『ダブルベッド』が、とても好きで。それから最初、うちの姉貴(柄本かのこさん)から「ピンク映画が、今、面白い」という噂を聞いて。池島ゆたか監督のオールナイトに行ってきただの、文芸座のピンク大賞がものすごいだとか。それで観るようになったら、どの作品を観ても、監督の個性とかホン(脚本)を書いた人の個性というか作家性があって、観始めた頃は何を見ても面白かったですね。それで女池監督の作品は、初めて観たのが『ビタースイート(濃厚不倫 とられた女)』ですごく面白くて。うちの親父が『BOOTLEG FILM=海賊版』に出ていて、(女池監督が)助監督をされていたので噂は聞いていて。それで映画を観た帰りにTSUTAYAに行ったら女池監督コーナーがあって、『まるで再出発』と『スワッピングナイト』『ぶ~やん』を借りて、特に『スワッピングナイト』がものすごくエロくて良かったです。

福 本当に18才にアピールする映画になってるってことは嬉しいですよね。女池って僕よりも20才年下なんだよね、そのまた20才ぐらい下に受けているというのは嬉しい。『花井さちこの華麗な生涯』もおとといの「Daily Yomiuri」でアーロン・ジェローが書いていて。政治的主題でもブッシュはいけない人だとか、北朝鮮が悪い国だとかではなく、この世界の掴みようのなさを、女池監督は表現していると。

佑 『花井さちこ~』は『ビタースイート』より、女池監督らしいと思いました。「映画芸術」で連載していたNYレポートの文体そのままの映画だなと思ったのを覚えています。あと、僕、久保新ニさんのものすごいファンで。『未亡人下宿』が大好きで。それで(ブッシュ大統領が)久保新ニさんの声で、うれしくて。tasuku03

女 めずらしい18才だ(笑)

佑 本当に楽しかったです。

女 アーロンさんは、イエール大学で教鞭をとられててビデオですけど上映してくれるっていうんで、ブッシュの母校でもあるっていうんで喜び勇んで行ってきたんです。他の映画祭もだけど、向こうの人は本当に楽しんで最初から最後まで観てくれて。でもとってもつまらないコメディを別な日に観にいったら、全く同じような反応だったのでガッカリしましたが…(苦笑)

サ 僕は完全版の方はビデオでしか観てないんですが、短い方(ピンク館で上映されたバージョン)はよくわからなかったのね。中野貴雄さんはわりとベタな脚本を書く方なんで、上手く交わして、なんか見つけようとしてる、そういう感じがしましたね。

2005.12.3 @ポレポレ東中野

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