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2006年12月16日 (土)

『おじさん天国』トークショー1

ゲスト:いまおかしんじ(『おじさん天国』監督)×守屋文雄(脚本家)×松江哲明(映画監督)

Ojisan061215『おじさん天国』公開からはや一週間、初めてむかえる週末にトークショーの第一弾が行われました。ゲストは本作の脚本家・守屋文雄さんと、『かえるのうた』(05)につづき『おじさん天国』の予告編(4バージョン)を作ってくれた映画監督の松江哲明さん、そしていまおか監督の3人。普段から親交の深いいまおか監督と松江監督が、俳優としても密かに注目を集める(?)守屋さんのシナリオ作りの謎に切り込みました。

—松江監督は『おじさん天国』を初めて観たときの印象はいかがでしたか?

松江:僕は全部で三回観てるんですけど、一回目は「二回目に観ると多分もっと面白いよね」という話をしたのを覚えてます。でも実際は二回目はもっとわからなくなった。三回目になると「この映画、さっぱりわからんな」と(笑)。ただ、すごく面白いっていうことは観れば観るほどわかる……それこそゲソみたいに、噛めば噛むほど味が出るような作品だと思います。でもなんで『おじさん天国』なんですか?

—実はタイトルの生みの親は守屋さんなんですよね。

守屋:ああ、やっぱ気になるんですかねえ。

松江:天国がないじゃないですか、地獄は出てくるけど。

守屋:ああ、そうですねえ。最初はおじさんが出てくるから『おじさん』というタイトルをつけてたんですけど、次に地獄が出てくるから『おじさんと地獄』になって、でも書いてるうちにだんだん楽しくなってきて「あ、これ地獄じゃないな!」と思った瞬間がありまして、最終的には天国になりました。

—おじさんが逃げている相手も最初は「夢」ではなく「女の人」という設定だったんですよね?

いまおか:ああ、最初はね。

守屋:おじさんが中国で子供を作って、その母親が「責任とりなさいよ!」と追いかけて来る設定で書いてたんですけど、実在するものより「夢」というわけのわからないものを怖がっているほうが面白いんじゃないかと思いまして、がらっと変わりました。

松江:夢や幻想というモチーフは過去のいまおか作品から続いているテーマですけど、今回守屋さんが脚本家として加わるにあたってそういうことは意識してたんですか? それとももともと守屋さんの中にあったものですか?

守屋:えー、ちょっとわかんないですね。ただ、第一稿をいまおかさんに見せたら「何か違う」というので直していくうちにそうなってしまったという感じですね。

松江:そもそもなぜ守屋さんに脚本を頼んだんですか?

いまおか:一緒にやってみたいシナリオライターの人はたくさんいるんですけど、頼むタイミングってあると思うんですよ。やりたいだけではなかなか頼めないというか、、本当に書いてもらうとなると2、3ヶ月〜半年は拘束しちゃうわけですし、実際に撮る気がないとお願いできなかったりする。その最初のひと言をどう言うかということですよね。今回はそれがたまたま酔っぱらってるときに横を見たら守屋がヒマそうにしてたんで、パッと頼んじゃったんですよ。頼んだ瞬間、撮らなきゃいけない気持ちになってきちゃったんですよね。

—最初は守屋さんも飲みの席で言われたので半信半疑だったとか?

守屋:まさか本当に電話がかかってくるとは思いませんでした。

—いまおか監督は守屋さんを「柔軟」と評していましたが、作り方としては守屋さんがいまおかさんのアイディアを受けて膨らませていった感じですか?

いまおか:そうそう。最初のプロットから二人で話し合ったことを元に守屋にシナリオを書いてきてもらって、それに対してああでもないこうでもないと言って、新しいアイディアが出てくるとまた電話して……ということを繰り返すんですけど、できあがってみるとそれがひとつも入ってない(笑)。「ひとつも入ってないね」と聞いてみたら「一回やってみたけど上手くいかなかった」と言われて。いつもは自分で脚本を書くのでそういうことをわからないままにやってきたんですけど、書かない立場としての考えとは別に、実際に書く人の手の運動というか躍動感というか—書き手の生理をくみながら作っていく監督としての作業を初めて実感した気がします。

松江:たとえば具体的に、やってみたけどうまくいかなかったシーンというのはどこですか?

いまおか:えーっとね、具体的なシーンはないんだけど、リカがおじさんと肉体関係をもったことがハルオにバレたあと、もっとドロドロの三角関係にならなきゃだめなんじゃないかということを二人で話しながらやってたんですよ。でもそれはやってみたけどうまくいかなかった、って言うんです。

守屋:いや、言い訳じゃないですけどほんとに書いたんですよ。書いたんですけど気持ち悪かったんでやめました。

松江:久米水産(劇中に出てくる企業)の社歌というのは守屋さんのアイディアですか?

いまおか:一番最初の、まだ紙きれ一枚に書いたような短いプロットしかなかった頃に守屋が「いまおかさん、社歌を歌うシーンを入れていいですか?」って聞くから、何の意味があるのかわかんないけど「いいよ」って言ってて。直しの段階でもずっとそのシーンだけは消えなかったの。途中では歌詞まで書いてあったんだよ。

松江:あ、あの歌詞は守屋さんが書いたんですか?

いまおか:いや、途中までは書いてあったんだけど長くなるだけだからなくなったね。

松江:ちなみにどんな歌詞だったんですか?

守屋:あのー、僕の小学校の校歌です。

いまおか:あ、そうなの? 「○○小学校」の部分を「久米水産」に変えただけだったの?

守屋:はい。

松江:いまおかさんの映画で劇中で歌ってるのは『かえるのうた』が初めてで、『おじさん天国』でもまた歌ってますよね。『かえるのうた』のときは『リンダ リンダ リンダ』(05)を観ていいと思ったと言ってましたけど、今回の歌の演出はまたちょっと違うと思うんですけど。

いまおか:ああ、そうね。歌があるとテンションが上がる気がするんですよ。観てて楽しいじゃないですか。マキノ雅弘が「映画の中に必ず祭りを入れる」と書いてたのを読んで、そういうのをたとえば歌みたいな形でどこかに入れられたらいいなというのを最近思ったんですよね。本当はシナリオ上でそういうシーンをちゃんと作らなきゃいけないんですけど、まあ、あんまり盛り上がらないホンだったんで。

松江:でも社歌を歌っているシーンで、ひとりひとりの顔がアップになるときにそれぞれの声が一人ずつかぶさるのはいいですよね。キャラがすごいわかりやすい。

—(笑)おじさんの名字にもなっている「高山」君という人も実在するんですよね。

守屋:高山君という友達がいたんで、その人から勝手に名前をとりました。

松江:どんな人なんですか?

守屋:ちょっと面白い顔の人なんですよ。

いまおか:今週の「ぴあ」の出口調査に出てるよね、顔写真が。

守屋:あ、そうなんですか?

いまおか:うん、100点入れてた! 俺も「あれ、この間挨拶した高山ってこの人かなあ?」と思ってびっくりしたけど。でも、松江君は普段アダルトビデオやドキュメンタリーを撮っていて、ピンクの世界ともわりと親しい関係にあるじゃないですか。あらためてピンク映画ってどう思ってますか?

松江:それを聞くんですか! 僕も今年、アダルトビデオとして作った『セキララ』という映画を劇場で上映したんですけど、やっぱりピンクだけで作った映画とかピンク映画館だけの見せ方だと限界があるというか、観るお客さんの層が決まっちゃってると思ってて。でもこういう一般の劇場でやると若い人や女性の方も来てくれるじゃないですか。そういう人が興味を持ってくれると作品自体の幅が広がると思うんですよね。僕の勝手な憶測ですけど、いまおかさんも『たまもの』(04)を一般劇場でかけて、そのときのお客さんの影響やリアクションが『かえるのうた』や『おじさん天国』にもあるのかなあという気がします。

—今回の上映も次回作につなげていきたいと思いますが、今後のご予定は?

いまおか:老人の恋愛モノと、ツチノコに復讐する話のふたつを考えていて、ひとつはいま守屋君とやろうとしてます。でも実はもう脚本の〆切は過ぎてるんですけど。

守屋:すいません!

いまおか:のうのうと現れてる。いつまでに書く?

守屋:今日は金曜日でしたっけ……月曜日までには。

いまおか:はい。

松江:僕は、来年の3月にやる「第2回ガンダーラ映画祭」のために『童貞。をプロデュース2』という作品を撮ります。前回は『おじさん天国』の同時上映(※月・水のみ)にもなっている『南の島にダイオウイカを釣りにいく』(いまおかしんじ監督)などと一緒に上映したんですけど、また人をいじめるドキュメンタリーを作ろうと思ってます。

最後には守屋さん、いまおか監督ほかキャストのサイン入りポスター抽選会も行われ、希望者は飛び入りでかけつけてくれた藍山みなみさんとのにわかジャンケン大会に。こっそり劇場にいらっしゃっていた吉岡睦雄さんも急遽ステージに上がり、嬉しいサプライズとなりました。見事ポスターを手に入れた方、おめでとうございました! 今日以降もまだまだイベントが控えていますのでぜひこの機会にご来場をお待ちしております。

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