地獄へ
「地獄に行こう」
とは言わなかったと思うけれど、「おじさん天国」打ち合わせの席で、いまおか監督はそんなようなことを口にした。「ドアを開けたらそこは地獄」「階段を上ったらそこは地獄」そんなようなことも口にした。
台本を書き始めてどのくらい経った頃か。毎日毎日地獄のことばかり考えていた頃。近所の酒屋・秋山の前で自転車に乗ったふたりの外人に出会った。
「コンニチハ」
と声をかけてきたふたりの男たちがモルモン教の布教活動をしていることは、そのいでたちからわかったけれど、ふと目をとめた胸のネームプレートには信じられない名前が書いてあった。
『イエス・キリスト』。
しかも、ふたりとも。
目の前に、イエスキリストがふたりもいる。
(地獄について訊かない手はない・・・!)
近づいてくるふたりのイエスキリストを目にしながら、俺はそう思った。
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