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2006年5月 6日 (土)

R18リレーインタビューVOL.2【速水今日子編】

お待たせしました、リレーインタビューの第二回目は『草叢』主演の速水今日子さんです。せっかくなので、速水さんが女将をつとめる新宿・ゴールデン街のお店「夢二(別館)」におじゃましてきました。飲み屋のカウンターで隣席の会話を聞いているような気分でどうぞお楽しみください。なんとこの日はサプライズゲストも登場。さて誰でしょうか…?

R18_hayami0102■速水今日子さん:『草叢』(Aプロ)

昨年末に一周年をむかえたという「夢二(別館)」。その名の通り大正モダン風のレトロな雰囲気が漂う店内には映画のポスターやチラシが貼られ、何気なく飾られた千代紙の折り鶴や色ガラスのグラスなど女子的ポイントもかなり高いです。自ら着つけた和服姿がよく似合う速水さん自身にも、どことなく竹久夢二の描く女の人の面影があります。

▼ピンク映画との出会い

速水:きっかけは瀬々さん*1の作品だったんですが、親が厳しいこともあってすぐには出演の決心がつかなかったんです。でもホン(脚本)を読ませてもらったらすごくよかったので、一晩考えさせてもらって次の日に「わかりました、やりましょう」と。それには結局出なかったんですけど、一晩考えたことで踏ん切りがついたのね。それから色んな人のホンを読むようになって、いいホンがあるなら出よう、と。

*1:瀬々敬久監督。京都大学哲学科卒業後、作家性の強い作品群でサトウトシキらとともに“ピンク四天王”と呼ばれる。監督作に『MOON CHILD』『肌の隙間』など。

―デビュー作は『花井さちこの華麗な生涯』(女池充監督)ですよね?

速水:その前の『不倫妻 情炎』のときにも一度お話をいただいて。雪のシーンがあって撮影は二月だと言われたんだけど、ちょうど舞台が入っていたのでお断りしたんです。女池さん*2とは電話でしか喋ったことがなかったんだけど面識はあって、その後にちゃんと事務所を通してオファーがきて、「今度はコメディですか?」みたいな。 

*2:女池充監督。2005年に『花井さちこの華麗な生涯』『ビタースイート』が連続公開され、ポレポレ東中野でピンク映画が上映される先駆けとなる。

▼関西人ならでは

―『草叢』では、夫の浮気や年下の男性との逢瀬を重ねながらも何喰わぬ顔で日常を送る人妻役です。本心のわかりにくいキャラクターや作品の世界はすぐに理解できましたか?

速水:あれはね、関西人でないとわからないと思う。私はわかるのよ。*3関西人は悲しいときに笑ってるの。上手く言えないんだけど、喜怒哀楽が激しいし、悲しんでる姿をあんまり他人に見せない。…このあいだ目の前で交通事故を目撃したんだけど、涙は出ないんですよ、そのときって。とにかく「どうすんの?どうすんの?」と言ってて。(被害者の)手をずっと握ってたんだけど、明らかに死んでるのにまだあったかいの。そのうち死後硬直が始まって動かなくなったの。動かなくなって初めてぼろぼろ涙が出てきた。東京の人がどこで泣くのかはわからないけど。

*3:速水さんは大阪出身。

Imgp9062ここで、『草叢』で速水さんと共演した俳優の吉岡睦雄さん*4、城定秀夫監督*5が偶然にも来店。当然のごとくお二人にもゲストに加わっていただくことに。

*4:吉岡睦雄。『したがる先生 濡れて教えて』('02/監:いまおかしんじ)でデビュー。2005年ピンク大賞ベスト10、男優賞受賞。今回の特集上映でも8本のうち4本に出演するなど人気急上昇中(?)。
*5:城定秀夫監督。2003年『味見したい人妻たち』でピンク大賞ベスト10第三位、新人監督賞受賞。近作にVシネマ「くりいむレモン 夢のあとに」など。吉岡睦雄の出演作も数多く演出。

―堀(禎一)監督との仕事はいかがでしたか?

速水:最初は別の脚本を渡されたんだけど、そのあとで『草叢』のを読ませてもらったらこっちのほうが全然よかったからそう言ったのね。

―どんなところがよかったですか?

速水:情緒のあるところですね。でも第一稿は結末が(完成版とは)違ってて、私と吉岡君が一緒に逃げるの。

―観ていて(ラストは)ひょっとして二人で逃げるのかな、と思いました。

吉岡:あと、(伊藤)猛さん*6が坊主になって、(速水さんに)「きらい、じゃないよ」*7って言うの。

*6:伊藤猛。佐藤寿保監督、瀬々敬久監督などの数々の作品に出演しているピンク映画界のベテラン俳優。
*7:『きらい、じゃないよ』('91)…『スローなブギにしてくれ』('81)などの脚本家・内田栄一が60歳にして初めて監督した8ミリ映画。伊藤猛さんは同作品に主演。

速水:完成版のラストはまた破天荒だよね、違う編集にしてくれて。でも初号を観たときに「え、ここで終わり?」って思ったよね?(ラストの変更を事前に)聞いてた?私は聞いてなかったな。

吉岡:僕は(助監督の)一平さんから初号の前に電話をもらって「吉岡さん、あんなに頑張りましたけど、ラスト切られました…」みたいなことを言われました。

速水:だって伊藤さんなんか坊主にした*8のに映ってないでしょ。

*8:劇中で浮気相手と別れて帰ってきた伊藤さんに、速水さんが「坊主にして」と言うシーンがある。

―吉岡さんとの共演は?

速水:面白かった…面白かったよ(笑)。

吉岡:……。

城定:現場で暗いんですよ。

速水:そう、現場で暗いの。私も控え室では寝る、という感じで。

吉岡:でも先輩の女優さんで控え室で寝てくれる人ってすごいありがたいんですよ。

速水:いつだっけなあ、吉岡君が「いやー(相手が)速水さんでよかったですよー」って言ってくれるわけ。で、「え、そうなの?ありがとう!」と思ったら「控え室であんなに寝てくれる楽な女優さんいませんでしたよ」だって。ひどくない?

城定:気つかうんだよね。

吉岡:そうそう、気つかっちゃうじゃないですか。最初から仲良ければ大丈夫ですけど初対面とかだと…(控え室で)眠いんだけど、相手は先輩だしどうしようーと思ってたら(速水さんが)ガー寝てくれて。

速水:すごい眠かったよね(笑)。

吉岡:かなり眠かったですね(笑)。

速水:だって大阪日帰りだったよ、日帰り!

―え!?

▼堀監督、欠席裁判

速水:それも急に決まったの。もう宿もとってあったのに(堀監督が)「いや、明日も天気悪そうだから」って。

吉岡:いや、あのときかっこよかったですよね。淀川を撮る予定だったのに撮らなかったから、猛さんも堀さんに「せっかく大阪まで来たんだし撮れよ撮れよ!」って言ったんです。そしたら堀さんが「いやもう、撮らないんです。僕は決めたんです!」みたいな。それで「おー、かっこいいなー」と思って。あと、堀さんの名言がありまして。あるシーンの撮影前に僕のとこに寄ってきて「ここは、勝負所だ。お前は、一日に一回しか力を出せない役者なんだ。ここが出しどころだ」みたいなことを言われたんですよ。「あー僕(一日に)一回しか出してないですかー?」って聞いたら「いや、一回ぐらいでいいんだよ。速水さんだって、二回ぐらいだよ」と言ってました(笑)。自分的にはね、十回ぐらいは出してるつもりなんですけど…。

―それで大阪ロケなのに、いわゆる大阪らしい光景がほとんど出てこないんですね。

▼ピンクは真面目

―速水さんから見た吉岡さんの魅力とは?

速水:吉岡君の魅力ですか?まったくないですね!

吉岡:……。

速水:ダメダメじゃーん、みたいな。

吉岡:一応なんか俺もいいとこありますよ…

―敢えて言うとしたら?

吉岡:うん、敢えて敢えて(笑)。

速水:クソ真面目(笑)。芝居に対してね。普段は真面目じゃないけど。

城定:うん、偉いよ。

速水:伊藤(猛)さんもそうなんですよ。みんな真面目だなーと思って。

▼ちょっといい話

吉岡:朝に撮影が終わって、またお昼に渋谷で集合というときがあったんです。雨が降ってたんですけど、向こうから黒いサングラスをかけた男の人が傘をさして、その下に女の人がいて“マネージャーと女優”らしく歩いて来るのが見えたんですよ。誰かと思ったら、「あれー速水さん?」みたいな。着いたら男の人はサーッと去っていって、速水さんは「おはよう」という感じで。もう呆然として、「こわい人やー」と思った。

速水:その前の日に大阪の撮影から帰ってきて、私もけっこう役に入っていたので「今は吉岡に夢中なの!」みたいな感じだったの。そしたら(彼が)拗ねちゃって。彼は仕事してるから会う時間もなくて「じゃあ渋谷まで送らせてくれ」と電話があって。でもすごく嬉しかったのは、(『草叢』の)初号試写を一緒に観たんだけど、その前に大げんかしてて、店があるから打ち上げにも行くなと言われてたの。そうしたら打ち上げ会場に行く前に彼が手を握ってきて「今までの映画の中で一番よかったよ」って言ってくれたの!そこで「打ち上げ行ってもいい?」って聞いたら「主役だからな」って。

吉岡:なんか、途中からサムイ話に…

―いえ、いい話です。(きっぱり)

吉岡:う…。あ、俺、「あんたのそういうところ好きやー!」っていうシーンはよく覚えてますね。

速水:私もすごい好きな台詞があったんだけどな…「拗ねて可愛い歳でもない」。

▼ピンク映画にひと言

速水:くさいんだけど(笑)、ほんとに熱いなあって。『花井さちこの華麗な生涯』の現場のときも「まあ、ピンク映画でしょう?」みたいなノリで入ったら、女池さんが「役のイメージはこうこうこうで…」とちゃんと説明してくれて、演技をつけてくれて。これだけ一生懸命作ってるんだからできるだけ色んな人に観てほしいし、もっと観やすい環境になればいいと思う。だからこういう特集上映は嬉しいですね。

幻のラストや撮影の裏話などまだまだ面白いエピソードがたくさん出てきそうでしたが、今回はこのへんで。『草叢』は上映作の中でも日活ロマンポルノの系譜に属するような正統派のドラマです。残念ながら画面には映っていない淀川や大阪の気配が思わぬところで見つかるかも。速水さんのお店にもぜひ足を運んでみてください、話の続きが聞けるかもしれません。

(インタビュー・文:那須千里)

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「夢二(別館)」
住所:新宿区歌舞伎町1-1-10 ゴールデン街
TEL:03-3209-3471
営業時間:午後8時〜午前2時
*お店のサイトでは速水さんの日記も読めます!

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コメント

こちらの表記ミスで大変ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。タイトルを訂正させていただきました。また、ご指摘いただきありがとうございます。今後とも宜しくお願い致します。

投稿: | 2006年5月 7日 (日) 00時47分

ごぶさたしてます、女池です。
ブログ、楽しく拝見させていただいております。
速水さんのインタビューに関して、一箇所訂正を。
速水さんに初めてお声を掛けたのは『ぶ〜やん』の時ではなく『不倫妻 情炎』の時でした。
2000年のことになります。
明日は息子と『名探偵コナン』を見に行く予定です。

投稿: meike | 2006年5月 6日 (土) 21時04分

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