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2006年5月27日 (土)

徐に、女子のためのピンク映画講座。

今、まさに「ピンクで、ポレポレ」中のポレポレ東中野、みなさんもう足を運ばれましたか? 今回は現役の20代女子として、ピンク映画の観方について真面目に考えてみたいと思います。

ところでジム・ジャームッシュの『ブロークン・フラワーズ』が公開されていますが、何を隠そう“ピンク”がキーワードです。人生の終盤にさしかかったビル・マーレイの元に届いたピンクの封筒。中には「あなたの息子が19歳になります」と書かれた手紙…。ある意味これは立派なピンク映画です。と、いうのは今思いついた言い訳にすぎないけれど。でも、観る側にとって、ピンク映画とそれ以外の映画との違いはその程度でいいのではないかとも思うのです。

もちろん、ピンク映画はピンク映画であって、それ以上でもそれ以下でもない。性描写を無視して「一般映画と同じ」などと言うつもりもないし、かといってそれをスキャンダラスに強調して差別化したいわけでもない。ただ、一般映画でもピンク映画でも、面白い作品があるのにそれ以外のものが邪魔をして観る機会を奪ってしまうのは単純に勿体ない。ドラマであろうとセックスであろうと、何を観るかは私たちの自由なのですから。

かくいう私のピンク体験など微々たるもので、動機もきわめて不純(清純な動機というものがあるのかわかりませんが)、黒沢清監督や周防正行監督のデビュー作がそういうものであるらしいということをどこかで聞きつけた小娘の青いミーハー根性だったと思う。それでもいざ観てみたらこれが面白かったのです。そのおかげで、巡り巡って今回の8本とも出会うことができました。始まりはそんなものでよいのではないでしょうか。

ピンク映画では同じ女優や男優が別の作品の異なる役で出てくることがよくあります。いつかどこかの何かで観たタイトルやメンバーが氾濫する作品群を観ていると、小津安二郎の映画を思い出します。原節子や笠智衆といった定番俳優たちが入れかわり立ちかわり現れては消えていく一連の作品は、どれも似ているように見えてそのくせ絶対的に違う。彼らが“小津映画”というジャンルを形作っていたように、ピンクの俳優もまた“ピンク映画”というジャンルの一部なのです。

取材してみて印象的だったのは、監督はもちろん役者の皆さんが口を揃えて「映画をやっている」と言っていたことです。ピンク映画の最大の特徴として、フィルムで撮られていることが挙げられますが、ビデオ作品でも“映画”として公開されているものはたくさんありますし、それらを“映画ではない”と否定することはできません。とすると何をもって“映画”とすべきかは、もう本当に作り手または観客の思想でしかないのかもしれない。そしてピンク映画の現場には「“映画”を作っている」という思想が色濃くはたらいているということです。

映画があるんだからそれでいいじゃないか。その上わざわざインタビューなんかして何を聞こうというのか。毎回そんな疑問と不安を抱えながらの取材でした。リレー形式にしたのは、他の人が語ることによってその人の人物像や作品が浮かび上がる群像劇のようなものにしたかったからです。何人もの話の中にたびたび重複して現れる名前はそれぞれ実に魅力的で、そのすべての点をつないでいくとぼんやりと全体が見えてくるようにしたかったのです。どんな人がこのブログを読んでくれているのか、いわゆるピンク映画の“当事者”ではない自分が間に入ることによって、まだ見ぬ相手にどうしたらきっかけとなる何かを伝えることができるか。それが成功したかどうかはともかく、何かの間違いでここへ来てくれた人(特に若い女の子!)がいたら嬉しいです。

レイトショーだからちょっとぐらい遅くなったり残業しても間に合うし、疲れていても一本一時間でさらっと観られる。しかも安い! それで充分でしょう? 真っすぐ家に帰るのが物足りない夜にはとりあえず東中野に寄ってみて下さいな。

(text by 那須千里)

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コメント

>tdcさま
ご来場ありがとうございました。海外ではより「ピンク映画」というジャンルへとらわれることが皆無なので、感想が新鮮ですよね。これからも上映機会を作れるよう尽力致しますので、何卒よろしくお願い致します。

投稿: ナヲイ | 2006年6月 1日 (木) 11時20分

こんにちは。今回の特集上映は2本立で本当にお得ですね。さて、私がピンク映画を好きな理由はいろいろありますが、実は、上映時間が64分までという設定も大事かもと思います。最近の映画は2時間以上もチンタラやってますが、長けりゃいいって訳じゃないし。限られた時間内で描き切ること(カラミのシーンも織り交ぜてだから、どう描写し何を省略するかは、シビアな問題かも)の凝縮感が、魅力的に思います。ところで、海外からの注目というのも、映画として素直に楽しむという見方で、今のおもしろい日本映画として評判になっているような感じですね。

投稿: tdc | 2006年5月27日 (土) 04時07分

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