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2005年12月29日 (木)

七福神と呼ばれた男たち<前篇>

女池充(以下「女」) 今、ロビーの方にコレ(「P-1 GRAND-PRIX2000」パンフ)が置いてあるんですが、5年前に「P-1 GRAND-PRIX」というピンク映画の上映会があって、その時にボクたちは「ピンク七福神」と括られたんです。僕らが助監督としてついた先輩の監督さんたち四天王(瀬々敬久、サトウトシキ、佐藤寿保、佐野和宏、敬称略)と戦おうということで企画されたイベントだったんです。その時に会場にはいたんですが、こうやって揃って(「七福神」と呼ばれた監督たちが)並ぶことって始めてのことじゃないかと思うんですが、貴重かどうか分かりませんが、話してもらおうと思います。まず、ボクの映画のことを話しません?せっかくだから。

上野俊哉(以下「上」) 皆さん寒い中ありがとうございます。女池を一番ぶっ叩いた人間です。なんか感じとしては僕のただ一人の後輩で、一本しかつきあいないんですけど、よう頑張ってるなと思ってます。

いまおかしんじ(以下「い」) んー、そうですね。ピンク映画って予算が決まっているんですが、その中で何しようかとここに並んでいる人も思っていて、どうしようか考えるんですね。どういう風に考えたらいいかっていうと、センター試験みたいな高得点はとれないみたいな感じがあって、一芸入試というか、その一芸をいかにみつけるかっていうのがテーマとしてあって。女池さんはそれを主観的にやってるのかなっていう。なかなか、それがみつかんなくて、落っこちちゃったり。そういうことの意味において同じ場所で戦っているなという風に見てます。ハイ。

鎌田義孝(以下「鎌」) 自分の作品について?(笑) (女池監督作品は)うまいなあ、と思いまして今、(『ビタースイート』を)観てました。女性を撮るのが上手いのかなと思ってたんですけど、男性も上手いし、カット割りも上手いし。

女 誉められたくて呼んだんじゃないですよ(笑)

榎本敏郎(以下「榎」) 厳しい意見っていうことじゃないんですけど。この前にやっていた『花井さちこの華麗な生涯』は苦手というか、ピンクで60分バージョン撮って、90分バージョンというかインターナショナルバージョンがここ(ポレポレ東中野)で上映されたんですけど、長くなって話は分かりやすくなったんだけど、それが面白さに繋がってないなみたいなことを、本人に言った記憶があるんですけど。『ビタースイート』に関しては、良い印象があって。脚本の西田直子さんが女池充と何本もやってるんですけど、初めてというと失礼ですけど、自然だなと。何気ない台詞でありながら、予定した台詞で、話を語る台詞でありながら、作り物じゃない台詞に聞こえた。それは監督の演出だったり、役者さんの芝居だったり、そういうことが全て作品の魅力だと思うんですけど、最近そんな感想を監督に言ったら、僕の周りではみんな評判悪いんだ、と。それは意外だなと思ってたら(今、聞いてたら)皆さん肯定しているんで。

女 ボクは田尻さんから聞いたんですが、みんな否定的だって。(会場笑い)

田尻裕司(以下「田」) それは、だからアレですよ。その話をみんなでした時に、榎本さんが「いやいや女池充の中ではいい方だよ」って…。

榎 「いい方だ」なんてそんな失礼な言い方は僕はしてないですよ。

田 やっぱり言った方がいいですかね。ここまでみんな誉めてるんだから…。ボクは『花井さちこ』と『ビタースイート』と殆ど現場に居たんで、あんまり客観的なことは言えないんですけど、ボクはまだ『花井さちこ』の方が…。ボクは雪山で撮った『情炎』が好きですね。

女 会場の人わからないから(笑)

田 ああ。…だから現場に居たからでもあるんですけど、凄い時間がかかってる感じがして、丁寧な映画だなと出来上がって思いましたけども、話がなんかつまんないいていうか(会場笑い)だからどうしたの?みたいな感じが凄いあって。脚本読んだ時からボクは言ってたことだけども、だからそれぞれの感情の流れは分かるけれどそれが面白くないっつうか。特に女池さんの映画のことでボクが凄く言っているのは、ボクはやっぱりピンク映画作ってて、自分の作品はたまにそうでもない作品もあるので置いといて、セックスシーンを観て欲しいっていうのがやっぱりある。よくピンク映画っていうのはセックスシーンさえ入れば何やっても良いみたいな言い方する人がいるけど、そういうものだとボクは思ってなくて。だからセックスシーンが輝かないと、それはやっぱりピンク映画じゃないんじゃないのって、だったら他の所で撮ればっていうのがずっとあって。女池さんの作品でボクは『情炎』以外はワンシーンぐらいは良いセックスもあったけど、ちょっと『ビタースイート』に関していうと…(セックスシーンは)必要ないっていうか。ボクがビデオで観てたら早回しするし、寝てても話は全然(分かる)みたいな。それがやっぱりちょっと…。現場で見てても…。

女 うしろで見てても…。

田 いただけない…。(会場笑い)オレさあ、現場でもちょっと言った筈なんだけど。「違うんじゃないの」みたいなコトは。

女 それは覚えてないですね。

田 特に、あのぉ・・。向夏とKINさんが台所に行ってガンとやって・・・セックスに至る。何かもうちょい激しい方が良いというか。カット割りでわりと誤魔化してる感じがして。

女 そんなにオレも深く考えてない(笑)

田 一番オレは、また来てさぁー、台本からちょっと設定が変わってるけども、向夏が離れて泣くように座ってるレストランのとこ・・・(ぶつぶつ)

榎 じゃあ台本での演出が弱いってこと?

田 うーん、だったらセックスやんなきゃ良い、とばせばみたいなのがあって。

女 割って入ってくれる人とかいない?(笑)

田 ただその、あの、女池さんの映画、ボク2本しか一緒にやってないですけど、『ビタースイート』も大変だったけど、女池さんって現場で誰よりも体力がない人なんで。助監督時代よりはもうちょい起きてられるけど。女池組って現場で(女池監督の)「寝待ち」があるんで…。だけど、カットかかって、役者さんとかカメラマンとかが、女池さんの方を見てても、芝居が終わってんのに女池さんが寝てて、フィルムがガラガラ廻ってる時もあって。それでも「もう一回」って言うじゃない?見てないからそれは当然なんだけど、これでいいのかと思いながら、だけどそうやって繰り返してることによって、ボクの知っている役者さんが一杯出てるわけだけども、見たことのない芝居になるっていうか。ずるずるずるずるやるじゃない。今回も二日目から最後までずっと(毎日の撮影が24時間)繋がっていたし。で、ある種独特な、まるで緊張感がないダラーっとした感じで。だけどその芝居が「この役者さん、こんなことするんだ」みたいなのが凄いあって。それは女池さんがあそこまで粘るというか、女池さんの言葉で言うと「世の人全てが自分のために何で協力してくれないんだ」みたいな酔っ払ってよく言う訳だけども、その感じが凄いこう…ダラっとしてるんだけど凄い引っ張っていってる力になって。うん、全体的にすれば、ああ凄いなあっていうか、そういう部分は尊敬してます。それが『花井さちこ』の90分バージョンとか、『情炎』とか、それが結実してるから、凄い好き。

坂本礼(以下「坂」) 僕はこの映画の感想じゃないんですけど、作っている人と作っている人の生活を結びつけるのは低俗かもって思うんですが。まあ西田さんは離婚経験者ですよね?で、女池さんって既婚者じゃないですか。こういう話って、まあ僕なんて「結婚ってお茶漬けの味みたいなもんだよ」みたいな話じゃないけど、そういう感じで(『ビタースイート』は)結婚を壊して他に行く話じゃないですか。女池さん、実生活で結婚っていう形を抱えてて、こういう話を作るんだなあって。これどういうことなんだろう、ホン(脚本)を作ってる時に、結婚を壊していくことに関してはどういう話し合いがあったのかなって思ったんですけど。

女 別に何もないんだけどね。そこらへんの壁はオレはないんだよ。結婚してるんですけど、最近円満になってきたんですよ。NYに僕は一年間行ってたんですけど、NYに行ってこの一年間で随分家庭環境も円満な方向になり、子どもも「お父さん」って言ってくれるようになり(笑)良いことづくめなんですけど。あんまりそういう考え方しないんで逆に。

坂 それは物語を作るってことに於いて、こう色々枠組みを作っていく上での一つっていうことなんですか?

女 答えにならないけど、ボクね、女の人にモテなかったんで。そのことは結婚・離婚よりは、モテる・モテないの方が微妙に結びついてるんですけど。

坂 皆さんはあんまりそういうこと思わないんですか?だから僕は石川さんと林さんは夫婦の関係性を持ってなきゃいけないのかなって、そういうのは思ったんですけど。

女 往々にして役者さんとは、かなり齟齬がありますよね。現場で。ボクが思っていることと役者さんが思っていることが、噛み合わないまま映画が終わっちゃうみたいなことが。ボクは噛み合ってないから分かってないですよね。この前、川瀬(陽太)さんにそういう話をしてもらったことがあるんですけど、結構そう思ってるんじゃないですかね。噛み合わないまま、色んなものが入ったらいいなっていうのがあるんです、フィルムの中に。それを良い方に転がしていければっていう。

(後半につづく)

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